プラクティス・コミュニティ

つい最近までは、ほとんどの従来型組織は職能(ビジネスアナリスト、プログラマー、テスター/品質保証、システム構築)に分かれたエンジニアリング部署を持っていた。その組織構造では、職能を超えたやりとりが多くなるので出荷可能なアウトプットをタイムボックスで区切って繰り返すプロセスを採用しにくかったものの、職能の中でのより深いコラボレーションを可能にし、彼らのそれぞれのコンピテンシーや知識をより発展させやすくしていた。

従来の職能別の部署が、素早いデリバリーを目指して協調クロスファンクショナルチーム(CFT)として再構成されるにつれて、それらの職能・能力を持った人が組織の中で散らばってしまった結果、世の中でうまくいっている実践例を活用したり、ましてや時間とともに発展させるということは難しくなった。この状況を改善するのが、プラクティス・コミュニティ(Community of Practice, CoP)だ。プラクティス・コミュニティは、組織の中に散らばった人々が協業するために情熱と知識を分かち合うとき、そこで起こるソーシャル学習と、そこで起こり進化してきた共有プラクティスを、進化させ育てる手段である。

CoPはあらゆる意味で、技能や職能を共有する人々の集まりであり、互いから学び合い彼ら自身や組織までも発展させるために寄り合っている。CoPはCommmunities of Excellence(後述のCenters of Excellence(未翻訳)とは混同してはいけない)や、Interest Leagues(アメコミのThe Justice Leagueとは混同してはいけない)、としても知られていて、ギルドとも呼ばれることもある。我々はアジャイルソフトウェア開発や、テスト技術、アーキテクチャ、マネジメント、コーチング、ビジネスアナリシス、DevOpsやその他沢山のCoPを見てきた。

ここでは、次の項目について説明する。

なぜCoPか?

組織中で互いから学習し合うためのスキルや機会は沢山ある。このようなグループを作ったり参加することは組織を横断して知識を活用するための”配管 (conduit)”を与えてくれる。CoPが形成されるのは人々が互いに一つのトピックについて学ぶのを助け合う必要性を認識したときである。これは次の3つの分野のいずれかになる。

  1. 互いに技術を共有する.  下の継続的改善(未翻訳)ゴール図は、多くのプロセス改善戦略を描いており、そこには改善を共有するための戦略が含まれる。CoPメンバーはF2Fの会話(たとえばリーンコーヒーのセッションなど)、ディスカッションフォーラムで雑談したり、実践者によるプレゼンテーション(たとえば昼休みのプレゼンテーションなど)で互いに技術共有を行う。
  2. 互いの学びを支援する. ゴール図にはCoPメンバーが互いを支援するために選ぶであろう戦略、特にコーチングやメンタリングなどが描かれている。公式には組織のCoEがコーチングやメンタリング、ゴール図に描かれている活動に対して責任があるかもしれないが、CoPのメンバーも非公式にしばしばこのような活動をする。これはあるトピックに対してCoEが存在しないときに、特によく起こる。
  3. 獲得した技術を明文化する.  いくつかのCoPは互いに学んだ技術や戦略をよくwikiやMicrosoft Sharepointのようなドキュメントリポジトリを使った非公式なやり方でまとめはじめる。

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上の継続的改善ゴール図は、CoPが選べるアクティビティー以外にも多くのことが描かれている。CoPは継続的改善を推進するために適用できる戦略のうちの一つにすぎないからである。

CoPのワークフロー

CoPではよくグループとして定期的に集まって共通の課題やフラストレーションやそれらを改善するアイデアを議論する。この議論から生じるものは、課題やフラストレーションへの改善提案でいっぱいになったバックログだ。この定例ミーティングは、これらの実験を始めるワーキングセッションになることがある。この実験からのフィードバックはこの検査と適合に意味があるのか、またはこの課題を解決できるような他の実験に集中するかを決めるためのフォローアップミーティングで議論する。定例CoPミーティングは彼らの学びを発展させるフィードバックループとして機能する。そこでは新しい実践例が出てきたり、実践例の精度が上がったり、新たなツールが出てきたりして、継続的改善のベースとなっていく。このミーティングの結果はリーンコーヒーや、学びの昼食会、読書会やナレッジベースなどの他の学びのメカニズムになっていく。

CoPの形成

CoPは2つの戦略で形成される:

  • その場その場で. まず、実践者たちが学びにおいて共通の関心事があることに気付き、実践する際にお互いに協力し合うことに決めたときに、アドホックな形で始まることが一番多い。グループは会社の食堂やカフェや会議室で物理的にミーティングを始めるようになる。CoPが必要なことが明らかになってくると、ディスカッションフォーラムを作るなど、社内のサポートの仕組みを準備することが次のステップになる。
  • 支援を受けながら.  もう一つの戦略は、組織のCoEが本業として支援するトピックに関するCoPを支援することに決めるということだ。例えば、アジャイルCoEは、アジャイルCoP、アジャイルビジネスアナリシスCoP、もしくはアジャイルアーキテクチャーCoPを始めることにするかもしれない。アーキテクチャーCoEは、アジャイルアーキテクチャーCoP、TOGAF (訳注: The Open Group Architecture Framework) CoP、もしくはマイクロサービスアーキテクチャーCoPを始めることにするかもしれない。

CoPの構造

CoPは、全体としての動きを整理し支援するよう共に働く有能なメンバーで最初にリーダーシップチームを作ることによって、どちらかというと流動的な構造をとっている。しかし、経験の分布はバランスがとれていたほうが望ましい。最も経験豊富なメンバーだけで構成されていたら、イノベーティブな新しいアイデア/コンセプト/プラクティスを生み出す機会を逃してしまう。もし全員かほとんどが最も経験豊富なメンバーなら、あるプラクティスやアイデアを守る傾向があり、それは元々、あるプラクティスやアイデアを組織に持ち込んだのが彼らである場合が多いからである。メンバーには在籍期間があるべきである。そうすれば、毎年か、半年ごとに新しい人々とアイデアで再び満たすことができる。CoPリーダーは、もしいるならば、チームの中から現れる場合が多いが、CoEによって作られたチームであれば、最初は誰かからアサインされた人がなるということもある。

CoPのメンバーシップは自発的なものだ。その結果、メンバーは最適かどうか判断して出入りするもので、想いの強さや割ける時間に応じて参加する。ある人は、0もしくは、それ以上のCoPメンバーになることができ、私たちとしては最低2つのCoPのメンバーになることを推奨している。例えば、CoPの1つは今の関心時で、もう一つは次に関心を持ちたいトピックというように。

CoPと他のチーム

CoPは2つのタイプのチームと緊密な関係にあったり、メンバーシップが重なっている:

  1. Centers of Excellence (CoEs)CoEは専門的なスキルを持った人々の集まりで、リーダーシップと組織にその知識を、目的を持ってばらまくことが仕事である。CoEとCoPの一番大きな違いは、CoEは目的を持って組織的に設立され、コーチングし、ティーチングし、メンタリングすることが本業である人々で構成されていることである。CoEは組織の資格によって集められることもある。CoEは、例えばアジャイル変革などの数か月や数年の短期的な組織目標を達成するためにできたもので、じきに解散する。CoPは、彼らの自発性によるものであるため、また、CoEは公式な資金供給がいったん停止したときに、CoPsとして再生する場合もある。
  2. ワークチーム.  CoPが支援するワークアクティビティーの一部かすべてを実行する「ワークチーム」が、組織にはよく存在する。たとえば、あなたの組織にEnterprise Architecture戦略を進化させ支援するEnterprise Architecture (EA)(未翻訳)チーム(簡単にアーキテクチャーチームとも呼ばれる)があるかもしれない。並行して、アーキテクチャスキルを学び共有するアーキテクチャーCoPがあるかもしれない。同様に、データマネジメント(未翻訳)チームとデータCoP、ポートフォリオマネジメント(未翻訳)チームとマネジメントCoPなど、他にも色々あるだろう。CoEはワークチームの一つであることには注意してほしい。

この図は、人々が同時に複数のチームのメンバーでいられる様子を例示している。これはUML記法を使っており、菱形がついた線は誰かがチームの一部、正確に言えばメンバーであるということを示す。ベティーはアーキテクチャとアジャイルのCoPのメンバーであり、デリバリーチームAのアーキテクチャーオーナーであり、エンタープライズアークテクチャーチームのメンバーであることがわかる。フレッドはアジャイルCoEのメンバーで、デリバリーチームAとB両方のアジャイルコーチで、アジャイルとテスト技術のCoPのメンバーである。

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謝辞

この記事を改善する、見識深いフィードバックをくれたDavid Dameに感謝したい。

オリジナル:Communities of Practice (CoPs)

http://www.disciplinedagiledelivery.com/people/communities-of-practice/

 (翻訳:長岡 桃子)

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